エグゼクティブサマリー
火のない所に煙は立たない: 2018年 たばこの健康被害低減をめぐる世界の状況

GSTHR レポートでは、より安全なニコチン製品を世界、地域、国レベルで入手・使用可能にすること、そうした製品に対する規制当局の対応、たばこの健康被害低減 (tobacco harm reduction) をめぐる公衆衛生上の可能性について、初めて報告を行っています。

喫煙に関連する疾病で6秒に1人が命を落としており、問題は悪化する傾向を示しています。裕福な国々での喫煙の急速な減少は鈍化している一方で、貧困国での喫煙は上昇傾向にあります。たばこを規制するための既存の手法は不十分であることが明らかになりつつあります。多くの人々が自力でまたは医薬品を使って禁煙しますが、失敗する人も数多くいます。たばこをやめられない人達にとって、「禁煙か死か」はもう唯一の道ではないのです。より安全なニコチン製品が別の道を与えてくれます。こうした製品が紙巻たばこよりも確実に安全であるという独立機関による証拠が、世界中で示されています。命を守る可能性のあるこうした製品は、公衆衛生分野で世界的な革新につながる可能性があります。

グローバルな喫煙習慣の蔓延

»紙巻きたばこの喫煙者数は、他の燃焼タイプのたばこ製品の使用者数を上回っています »紙巻きたばこは最も危険なニコチン摂取法です »たばこに火をつけることが問題なのです。つまり、燃焼によって危険性の高い有害物質が発生するのです »人はニコチンを求めて喫煙しますが、死亡の原因となるのはタールとガスです »喫煙は、非伝染性の病気による死亡の最大の原因となっています »喫煙により最も大きな被害を受けるのは貧しい人々であり、最貧国は効果的なたばこ規制を行う能力が最も低いのです »多くの人々が自力でまたは医薬品の力を借りて禁煙しますが、失敗する人も数多くいます »高所得国における喫煙率の急速な減少は鈍化しはじめ、貧困国の多くでは喫煙は増加に向かっています »既存のたばこ規制手法では、人々が喫煙をやめるための支援策として十分とは言えません

より安全なニコチン製品とたばこによる健康被害の低減

»より安全なニコチン製品 (SNP) は、燃焼タイプのたばこ製品と比較して危険性が大幅に低い形でのニコチン摂取を可能にします、つまり「火のないところに煙は立たない」です »こうした製品は、喫煙者自身、身近な家族、周囲の人にとって、紙巻きたばこを喫煙するよりも安全であることが国際的な証拠により示されています »ニコチンをより安全に摂取する方法を提供することによって、ニコチン使用を続けながらも喫煙による健康被害を回避することができます »ニコチン摂取をやめられない人達にとって、「禁煙か死か」はもう唯一の道ではないのです。電子たばこ、加熱式たばこ、そしてスウェーデンの噛みたばこ (snus) を含むSNPは、「禁煙かトライか」という別の道を提示します »SNP使用の急速な拡大は、公衆衛生専門家や政府からの反対に頻繁に直面しながらも、消費者からの需要に牽引されてきました »欠陥のある科学理論、一般人に誤解を与える情報、扇動的なメディア報道のすべてによって、消費者、政治家、一般人へSNPに対する疑いの種がまかれています »こうした製品を禁止したり、厳しい規制を適用したり、高い税金を課したりすれば、命を救う可能性を持つ製品の入手を事実上不可能にしてしまいます »SNPは公衆衛生分野で世界的な革新を起こせる可能性があるだけでなく、コストの面からも国に負担はありません

主要指標

喫煙

»6秒に1人が喫煙関連の病気で命を落としています »喫煙者の半数は、喫煙関連の病気で早死にします »毎年、600万人以上が喫煙関連の病気で死亡しています »紙巻きたばこの喫煙による死亡者数は、マラリア、HIV、結核による死亡者数の合計を上回っています »WHO(世界保健機関)は今世紀末までに10億人が喫煙関連の病気で苦しむことになると予測しています »喫煙関連の病気による医療費と生産性低下のコストは、全世界で1年間に1兆米ドルに上るとWHOは試算しています

より安全なニコチン製品

»電子たばこは紙巻きたばこより95%以上安全であると推定されています »Snusは使用の際に吸入を伴わないので、全喫煙関連疾患死のほぼ半数を占める呼吸器疾患のリスクはなく、周囲の人にもリスクはありません。早死、糖尿病、すい臓がん、口腔がん、心疾患、脳卒中との有意な関連性もありません »2021年までに、5,500万人以上が電子たばこや加熱式たばこを使用するようになり、こうした製品の市場規模は全世界で350億米ドルになると予想されています »日本では、加熱式たばこの使用が広がり、2年間で紙巻きたばこの販売数量が27%減少しました。これは未だかつてない喫煙の減少です »スウェーデンでは、snusが喫煙関連の死亡者数を減らす有効な手段となり、同死亡者数はEU域内で最低となっています »EUによるsnus禁止措置が撤回されれば、EU域内で年間32万人の早死が阻止できるでしょう »ノルウェーの喫煙者がsnus使用に切り替える中、同国の若い女性の喫煙率は1%という世界最低値に低下しました »英国では、300万人いる電子たばこ使用者の半数超は、元喫煙者です »喫煙率の上昇が予想されている国を含め、39ヵ国がSNPを不適切にも禁止しています »62ヵ国が電子たばこをたばこ規制法の下で規制しています

報告書 - 主要テーマ

GSTHRレポートは被害低減の原則に従って作成されています。被害低減とは、製品や行動を単に禁止するのではなく、危険のある製品をより安全な形で提供したり危険の少ない行動を促すことによって、健康へのリスクを低減するための政策、規制、行動を指します。被害低減は、実績のある公衆衛生上の戦略です。

実際にたばこの健康被害低減策はどのように機能しますか? SNPを提供することにより、たばこの煙に含まれている発がん性物質を吸入しないでニコチンを摂取することを可能にします。こうした新しい製品には、2000年代中頃に初めて登場した電子たばこも含まれています。最近では、加熱式の器具が開発されてきています。これは燃焼に至らない低い温度でたばこを加熱するため、ニコチン放出には十分でも有害物質を大幅に削減することができるのです。スウェーデンの無煙snusには200年ほどの歴史がありますが、たばこの健康被害低減に大きく貢献するという証拠を受け、再び注目を浴びてきています。

SNP と健康。独立した立場で行われた国レベルの科学者・臨床医・議会によるレビューは、次のように結論付けています:»喫煙の方がSNP使用より安全であるとの証拠はありません »製品に応じてリスクの度合いに差があり、紙巻きたばこのリスクが最も高く、非燃焼タイプ製品のリスクが最も低くなっています »喫煙から電子たばこへ切り替えると、健康状態を改善することができます »電子たばこへの切り替えは禁煙に役立ちます »現在のところ、電子たばこやsnusの使用による健康への長期的な悪影響は報告されていません »若い人達が電子たばこを試す一方で、これが紙巻きたばこの喫煙につながるという証拠はありません。若い年齢層の喫煙率は低下しています »電子たばこの蒸気を周囲の人々が吸い込むことにより悪影響があるという証拠はありません。したがって、周囲の人々への危険性はありません »ニコチンの使用による短期的・長期的な悪影響は報告されていません。つまり、ニコチンに「依存」すること自体は健康リスクではないと言えます

被害低減は健康と安全を守るためだけでなく、重要な人権保護の側面を持ちます。1946年世界保健機関憲章の前文は、「到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的 若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一である」と定めています。これには、喫煙者や、この目的を達成する上で喫煙者が必要な情報、サービス、製品を入手する権利も含まれています。

喫煙者は、喫煙による病気や早死を回避するのに役立つ被害低減製品の入手を否定されてはなりません。このことは、被害低減がたばこ規制の明確な戦略の1つであることを明記した2005年たばこ規制枠組条約で確認されています: 「供給、需要及び害を低減させるための一定の戦略であって、たばこ製品の消費及びたばこの煙にさらされることをなくし又は減少させることにより人々の健康を改善することを目的とするもの。」

SNPの消費者。ここわずか数年で新たなSNP使用の急速な拡大が多くの国で見られるようになり、スウェーデンとノルウェーでは比較的短期間でsnusが喫煙にとって代わりました。日本では、加熱式たばこの使用者数の増加により、紙巻たばこの販売数量が過去最高の減少を記録しています。これは、入手可能な地域ではSNPを使用したいとの欲求が存在し、また、使ってみて気に入ったり喫煙の代わりとして適していると思ったりしたら、多くの喫煙者が喫煙よりSNPを選択することを示しています。

ここで重要になってくるのは、SNPの使用が喫煙を減らし、公衆衛生を向上させることができるかどうかです。これまでで最も説得力のある証拠は、snusの使用拡大と喫煙者数の減少により、喫煙関連の死亡者数がヨーロッパで最低となったスウェーデンの事例です。

ほとんどの場合、SNPの使用拡大は、政府・たばこ規制・公衆衛生関係者による支持のないところで起きてきています。こうした状況を作り出したのは、SNPに興味を持ち、そして、喫煙からSNPに切り替えたい人々に支援やアドバイスをしてきた一般の消費者なのです。

規制と管理。新たなSNPの出現により、たばこ規制の体制は国内・国際の両レベルで課題に直面しています。米国、英国、ニュージーランドでは比較的自由に電子たばこによりニコチンを摂取することができますが、タイやオーストラリアでは罰金刑や禁固刑を科されます。

国会議員や政治家も、医療関係者や一般消費者と同様に、矛盾した研究成果に混乱したり、被害低減の考え方に反対する団体や扇動的なメディア報道に影響を受けたりしがちです。

法律でSNPの入手を拒否したり禁止したりするのは、独立した確たる証拠の基盤を否定することであり、逆説的に、(世界中で自由に入手できる)紙巻たばこの使用を存続させ、たばこ会社の継続的な利益に資する行為です。

適正な規制によって消費者の安全と信頼を守り、製品イノベーションを促し、紙巻きたばこよりもSNPの使用を嗜好するよう導くべきです。

健康被害低減へのビジョン

喫煙を根絶するという素晴らしい目標から目を逸らさず、より安全な製品の入手を否定するような過度に規範的な規制や管理を許さないことが不可欠です。SNPは、最も画期的な現代の公衆衛生戦略の1つとなる可能性を秘めています。世界のほとんどの公衆衛生対策には多額の費用がかかりますが、この戦略では、政府、国際機関、NGOに金銭的負担は全く発生しません。

「火のない所に煙は立たない: 2018年 たばこタバコの健康被害軽減低減をめぐる世界の状況」
ハリー・シャピロ編著、ナレッジ-アクション-チェンジ(8 Northumberland Avenue, London, WC2N 5BY, United Kingdom)発行
© Knowledge-Action-Change 2018

レポートの全文(PDF)は、 www.gsthr.org にて入手可能です。
国ごとの詳細は、 www.gsthr.org にて入手可能です。
レポート全文の印刷物をご希望の場合は、 www.gsthr.org/contact をご覧ください。
このエグゼクティブサマリーは、他の言語にも翻訳されていますat www.gsthr.org/translations

「火のない所に煙は立たない: 2018年 たばこタバコの健康被害軽減低減をめぐる世界の状況」のコンセプト・デザイン・分析・執筆は、スモーク・フリー・ワールド基金.からの支援を受け、ナレッジ-アクション-チェンジが行いました。同基金は、本レポートの内容・分析・結論には全く関与しておらず、当初のコンセプトの段階でのみ情報の提供を行いました。

1 Oct 2018 – Sum – JAP

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